ドラッグストア業界の動向や魅力・大手企業の年収比較を薬剤師の転職・就職アドバイスも交え解説

業界研究

昔は商店街などにある主に市販薬と化粧品だけを販売しているような小さな薬局がメインでしたよ?

今は100円均一、日用品、食料品まで取り揃えた比較的、大規模なドラッグストアが増えましたね。

市販薬を買うとき以外にも私、気軽に立ち寄っています^^

やはり市販薬とミネラルウォーターが、同時に買えるのはいいなと思いますね。

暮らしていくうえで不可欠、市販薬をメインに取り揃えているドラッグストア。

今回はドラッグストアの基本情報、市場規模、主要企業と年収、動向、展望、就職・転職のアドバイス、ドラッグストア勤務の薬剤師の方のお話も交えお伝えしていきます。

 

業界全体図から見たドラッグストア業界

セイジさん、ドラッグストア業界は全体図から見るとどういう立ち位置なのです?

日経業界地図では「専門店」に分類されています。

衣食住関連品を取り扱うお店はだいたいここに分類されていますよね。

そうですね。アパレル、ファストフード、家具店も専門店に分類されています。

そのほか考えられる周辺業界としては(主に市販薬の)製薬会社、化粧品メーカー、医療機器メーカー、食品メーカーのほか、ドラッグストアを併設するかたちで業界に参入してきたホームセンター、ディスカウントストア、コンビニエンスストアなどの小売、通信販売会社も挙げられます。

 

ドラッグストア業界の基本情報

ドラッグストアで取り扱う市販薬

ドラッグストアで取り扱う医薬品は、医師処方の「医療用医薬品」ではなく、「要指導医薬品」「一般用医薬品」がメインとなります。また一般用医薬品は、副作用のリスクに応じて第一類・第二類・第三類に分類されています。

これらはいわゆる市販薬ですが、(オーバー・ザ・カウンターの略で)別名OTC医薬品とも呼ばれています。

以前はよくカウンター越しで薬局の方から買っていましたよね^^

昔の名残といえます。近頃は通過レジ形式のお店も増えてきましたから…。

要指導医薬品の販売時、薬剤師が対面で書面での情報提供・指導をすること、第一類医薬品の販売時、薬剤師が書面での情報提供・指導をすることが必要ですが、第二類・第三類医薬品は登録販売者でも対応できます。

登録販売者は好待遇で採用されやすく、人気資格のひとつといっていいでしょう。

薬剤師でない方も今は、登録販売者を取得すればドラッグストアで資格者として勤務できるのですね!

薬学部卒以外でドラッグストア業界を目指されるのであれば、まず登録販売者を目指しましょう。知識も得られますし、給与も違ってきます。

市販薬以外も取り扱う理由

前述のとおりドラッグストアで販売しているのは市販薬だけではありません。あくまでも一例ですが

化粧品/シャンプー類/ヘルスケア用品/衛生用品/介護用品/ベビー用品/健康食品/家庭用品/洗剤/日用品/雑貨/食品/飲料/酒類/ペット用品

なども取り扱っています。

みなさん、お察しのとおり、その理由は集客です。

ドラッグストアなのに食品の売上が群を抜いて多い店舗もある。このような現象が確認できるのもまた、興味深い業界特徴のひとつです。

市販薬や化粧品だけでは、生き残れないということなのかな…。

ただ市販薬や化粧品の利益率はすこぶる高いです。ドラッグストアではいつもは食品など、たまに市販薬を買っていただければ」というスタンスを取っているようです。

多くのドラッグストアがこのビジネスモデルを導入、すでにドラッグストアの常識となっています。

まだまだ成長している

ここ数年、ドラッグストア業界各社、売上をグングン伸ばしているといえます。

例えばツルハ、2017年5月決算で5770億円、2018年5月決算で6732億円、2019年5月決算で7824億円と約1000億円ずつ伸ばしていました。
またウエルシアも、2018年2月決算で6952億円、2019年2月決算で7791億円、2020年2月決算で8682億円とこちらも大きく伸ばしています。

このままいくと売上1兆円越えのメガストアなるものも出てくるかもしれませんね。

 

ドラッグストア業界の市場規模の変遷

日経業界地図によると次のとおり、好調に推移しています。

日経業界地図年度(実年度)全国総売上高(日本チェーンドラッグストア協会)
2017(2015)6兆1325億円
2018(2016)6兆4916億円
2019(2017)6兆8504億円
2020(2018)7兆2744億円

 

ドラッグストア業界の動向

熾烈なトップ争い

日経業界地図各年度版を見ると、以下のとおりランキングは毎年、変わっています。

日経業界地図

実年度

2020

2018

2019

2017

2018

2016

2017

2015

1位ツルハウエルシアウエルシアマツモトキヨシ
2位ウエルシアツルハツルハウエルシア
3位コスモス薬品サンドラッグマツモトキヨシツルハ

こうしてみるとツルハは、着々と順位をランクアップさせていますね。

ウエルシアはイオングループ。コスモス薬品はもともと九州を主な拠点としていた企業で現在、全国展開中です。マツモトキヨシは長きに渡りトップランカーとして業界を引っ張ってきましたが、2018年度は5位でした。

 

ドラッグストア業界の展望(予測)

24時間営業が増える

これまでコンビニやファミレスが24時間営業の代表格でしたが、

・働き方改革の導入
・人手不足の影響

などから時短営業化してきました。その流れに逆らうかのようにドラッグストアは、積極的に24時間営業化してきています。

深夜、急に市販薬が要ることも少なくありませんから、私たちは助かりますね^^

深夜は正直、人件費は割高、光熱費もかかります。それでも24時間営業を推すのは深夜帯の買い物の需要を引き受け、売上をさらに伸ばし、業界トップを目指したい企業の思惑の表れともいえます。

今後しばらくはドラッグストアの24時間化が一気にそれとも緩やかに進むのかどうかが注視すべき事柄でしょう。

またいかに店舗内の密(感染症)対策と薬剤師、登録販売者人材の確保を行っていくかが大きな課題といえます。

 

ドラッグストア業界の主要企業と年収一覧(各社有価証券報告書より抜粋)

主要各社の年収一覧

ツルハホールディングス5,520,657円
ウエルシアホールディングス7,962,000円
コスモス薬品4,137,208円
サンドラッグ5,349,611円
マツモトキヨシホールディングス7,190,679円
【参考】その他の主要企業
スギホールディングス、ココカラファイン、富士薬品グループ、クリエイトSDホールディングス、カワチ薬品、キリン堂ホールディングス、中部薬品、Genky DrugStoresなど
調剤薬局系 
アインホールディングス、日本調剤、クオールホールディングスなど

 

ドラッグストア業界トップ3社を比較

ツルハホールディングス

2018年、業界首位に昇りつめた同社。ツルハグループ、ツルハドラッグを運営しています。必要とされる地域・場所に出店するを信念ドミナントエリア戦略(公式サイト上の表記)を行っています。

ドミナント戦略はコトバンクによると

チェーン店などが、ある特定の地域に集中して出店し、知名度を上げたり配送を効率化したりすることで、同業他社よりも優位に立つことをねらう商業戦略

となっています(デジタル大辞泉)。

2017年には杏林堂薬局を傘下に入れるなど30件以上のM&Aを行ってグループを拡大してきています。また四半世紀にわたりイオンと資本提携関係にあります。

同社は熾烈な競争のなかドミナント戦略とM&Aでウエルシアを抑え、首位を勝ち取ったといえます。

基本情報
売上高:7824億4700万円
経常利益:433億1300万円
店舗数:国内2150店舗 海外22店舗
社員数:8834名
平均年齢:44歳3カ月
平均勤続年数:15年8カ月

ウエルシアホールディングス

ウエルシア薬局、シミズ薬品(ダックス)、丸大サクラヰ薬局(ハッピー・ドラッグ)などをグループに擁している同社7割が調剤薬局併設となっています。また24時間営業にも注力しています。

同社はイオン出資の子会社であり、首位のツルハ、クスリのアオキとともにイオンのドラッグストア連合「ハピコム」を構成しています。

基本情報
売上高:8682億8000万円
経常利益:403億4800万円
店舗数:2105店舗
社員数:9882名
平均年齢:57.9歳
平均勤続年数:3.4年

コスモス薬品

先ほど説明したとおり九州から全国に展開している同社。現状、茨城県、東京都に出店を果たしていますがそれ以外の関東甲信越、東北、北海道エリアには未出店です。それにもかかわらず業界3位まで浮上してきました。日経MJでは

“小商圏に大型店を出店し、徹底したローコスト運営でEDLP(毎日安売り)を実現。日常の消費を総取りしている”

と評されています。

基本情報
売上高:6111億3700万円
経常利益:272億9200万円
店舗数:1058店舗
社員数:4232名
平均年齢:29.3歳
平均勤続年数:5.1年
参考文献
株式会社ツルハホールディングス第57期有価証券報告書
ウエルシアホールディングス株式会社第12期有価証券報告書
株式会社コスモス薬品第37期有価証券報告書

 

現役薬剤師から聞いたドラッグストアのこと

今回、ドラッグストアに勤務されている薬剤師の方にお話を伺うことができましたのでご紹介していきます。

勤務薬剤師が語るドラッグストアのお仕事

はじめまして。私はドラッグストアに勤務している現役薬剤師です。

ドラッグストア業界のお仕事には、

・接客
・商品管理
・売り場管理
・従業員教育
・本部業務

があります。

接客

お客様からのお問い合わせに答えたり、ご要望に合わせ商品を取り寄せたりします。ほしい商品が品切れし、入荷予定もわからないなど、お客様の期待に添えないことも多いため、クレームにつなげないような接遇が大切です。レジ打ちも接客の一部でスピードと、正確性が求められます。

商品管理

ドラッグストア商品の動きは流動性が高く、テレビ番組やCMで取り上げられると、売り上げが急増することも。季節や病気の流行でも売れる商品が変わってきますので、常にアンテナを張りめぐらし、発注内容を変化させます。商品管理には賞味期限チェック、棚卸しも含みます。

売り場管理

店舗入荷商品の品出しや清掃など、買いやすい売り場づくりも大切なお仕事です。ペットボトルなどの重量商品やおむつ、トイレットペーパーなどのかさばる商品も多いため、とにかく体力勝負です。

従業員教育

ある程度経験を積むと、やがて新人教育係も担当します。ドラッグストア業界は人材の出入りも激しいため、教育機会も多いです。おそらくどこもOJTが主流ではないでしょうか。実際、業務のやり方を見せて新人に説明していきます。

本部業務

店舗運営以外のすべての事柄は本部が担っているといえます。本部では店舗運営チェック、商品買い付け、新店舗開発、経理、人事などを行います。

勤務薬剤師が語るドラッグストアの職制

ざっくりとですが店長、副店長、本部社員です。

店長

店舗のトップです。店舗所属社員、パート、アルバイトと売り場すべてを管理します。シフト作成や、遅刻や残業などの勤怠チェック、部下への指示出しが主な仕事。店長には店長手当が1~3万円程度、支給されるのが一般的です。

副店長

店長不在時の陣頭指揮、店長業務を補佐するのが副店長です。ただし副店長が配置されていない会社や店舗も多く、手当は支給されないことがほとんどです。

本部社員

店舗には属さず本部で働きます。一定エリアのいくつかの店舗を管理するエリアマネジャーが、本部社員の登竜門。店長よりも上の管理職です。優秀な人はエリアマネジャーを経て、さまざまな部署の管理職として出世していくのが定番です。

薬剤師がドラッグストアで求められること

調剤業務

最近はドラッグストアの店内に、調剤薬局を併設しているケースが多くなってきました。調剤併設店舗での薬剤師のお仕事のメインはもちろん、調剤業務です。

街の調剤薬局と同じように病院の処方箋を受け付け、お薬を準備、服薬指導し患者様にお渡しします。

要指導医薬品、第一類医薬品の販売

要指導医薬品と第一類医薬品は、薬剤師しか販売できません。

・ロキソニン
・ガスター10
・リアップ

などが代表的お薬で、どれも利益の高い売れ筋商品です。売り上げ貢献できるよう丁寧な接客を心がけることが求められます。

勤務薬剤師が語るドラッグストアでの出世

登録販売者資格を取得する

店長になるためには登録販売者資格が必須といっていいでしょう。高人気資格で合格率も今は4割ほどです。早期からしっかりと勉強し試験に臨みましょう。毎年似たような出題も多く過去問に集中し取り組むといいです。

指示待ちをやめる

店長を目指すなら指示待ち人間は脱却しましょう。ドラッグストアはとにかく人手が足りません。店長の指示を待っているだけでは品出し、レジ打ちなど、単純作業ばかり割り当てられるようになります。

売り場づくり、発注など難易度高の仕事に自分から手を挙げ取り組もうとすれば、店長への抜擢、出世につながるはずです。

キャンペーン商品を売りまくる

ドラッグストアでは高利益特定商品の売上実績が重視されやすいです。店長からエリアマネジャーへ出世したいならキャンペーン商品が売れるようなディスプレイ展開や接客を工夫し、売上で結果を出すことが出世の近道です。

とにかく数字で実績をつくる

ドラッグストアは業界再編真っ只中。食うか食われるかです。エリアマネジャー以上の管理職も例外なく求められ見られるのは数字です。いくらスキルや資格、人望があっても数字で結果が出せなければ出世コースに乗れません。

ありがとうございました! これより就職・転職のアドバイスをお伝えしていきます。

 

ドラッグストア業界への就職・転職アドバイス

ツルハの採用情報を基にお伝えしますと、

新卒は薬剤師職と総合職に分かれています。薬剤師はもちろん登録販売者、管理栄養士を保有していれば資格手当もつきます。

実店舗がある小売業界は、全般的にいえることですが、どのような人が働いていて、どのようなサービスが展開されていて、どのような商品が陳列されているのか、足を運びさえすれば手に取るようにわかることがたくさんあり、会社研究がしやすいです。

自宅や今の職場の周辺にドラッグストアがあれば、買い物のついででも構いませんからぜひ、立ち寄って自分に合いそうかどうか見極めてみてください。

転職を志す方は、自分のこれまでの経歴やスキルを棚卸し、ドラッグストア、本社勤務でどのような成果を上げられ、会社に貢献していけそうか、まとめておくといいです。

ドラッグストア内に貼り紙で求人を出しているのを見かけることも多々あると思いますが、できることなら公開求人よりも転職エージェントが保有する非公開求人への応募をオススメします。

転職とキャリアアップでは薬剤師向け、一般向けの転職エージェントを複数ご紹介していますのでぜひ、ご参照いただけますと幸いです。

 

まとめ

ドラッグストア業界は競争が激しく、在籍し身を置くことができたらおもしろい業界なのかもと思いました。

そんなドラッグストア業界で、内定を勝ち取っていただきたいです!

就職と転職、共通していえることは人生の目的と就こうとしている仕事の方向性が合致していることが重要です。それがミスマッチを防ぐカギで、長続きできるかその明暗を分けます。

人生の目的についてその意味を、これまで考えたことがない方は関連記事で説明していますのでぜひ、併せてお読みいただけますと幸いです。

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