銀行業界の基本情報・年収や動向・大手企業の比較を経験者のアドバイスを交えて解説

業界研究

新卒者、転職者、どちらにも非常に人気がある銀行業界。「学生が就職したい人気企業ランキング」などでは、毎年のように証券会社、保険会社とともに銀行も上位に入っています。

2017年、このようにお伝えしていたのですが、世の中、何が起こるかわかりませんよね…。

そうですね。2018年以降「就活生の銀行離れ」が報じられるようになりましたよね…。

それでも銀行は私たちの経済活動の中心的役割を担っており、なくてはならないものです。

人手不足で銀行が機能しなくなったら、お金がおろせなくなりみんな、パニックになりそう。

人手不足ではありませんが過去、豊川信用金庫、佐賀銀行でそのような事案(取り付け騒ぎ)も実際にありました。

そんな私たちの生活に不可欠な銀行業界の基本情報、市場規模、主要銀行の年収、動向、展望、経験者談、就職・転職のアドバイスについてもお伝えしていきます。

業界全体図から見た銀行業界

セイジさん、銀行業界は全体図から見るとどういう立ち位置なのです?

日経業界地図では「金融」に分類されています。

金融に分類されている業界としてはほかに

・クレジットカード会社
・消費者金融
・生命保険会社
・損害保険会社
・証券会社
・不動産投資信託(REIT)
・リース会社

があります。

セイジさん、銀行は企業融資を行いますからほぼすべての業界に関係しているといっていいのですよね?

そうですね。ときにメインバンクとして企業の経済活動を下支えしているといえます。

銀行は大企業から個人事業主まで、融資でつながることになります。またビジネスシーンだけではなく通帳を持つ顧客一人ひとりのライフ(生活)にも密着しているというのはもう説明するまでもないでしょう。

 

銀行の基本業務

銀行は基本、

・預金
・貸出
・為替

業務を行います。

預金

銀行は顧客からお金をお預かりします。

貸出

いわゆる融資業務です。顧客からお預かりしたお金を必要な企業などに融資(運用)をし、利息収入を得ます。銀行の収益の大半はこの貸出業務から得た利潤となっています。

為替

いわゆる送金(振込)業務のことです。給与の振り込み、ガスや水道代の引き落としなどが該当します。ここでは振込手数料や自動引き落とし手数料などで、収益を得ています。

 

銀行の種類

また銀行は、次の4種類に分けられます。

・メガバンク
・地方銀行
・ネットバンク
・信託銀行
メガバンク

いずれも「み」ではじまる三菱UFJ、三井住友、みずほの3グループが現在、メガバンクとされています。メガバンクは信託銀行や証券会社を傘下に入れるなど総合金融グループとして現在、日本経済を牽引しています。

地方銀行

いわゆる都道府県内を基本営業エリアとしている金融機関で、北海道銀行、静岡銀行、京都銀行、琉球銀行などです。

都道府県によってはメガバンクよりも地方銀行のほうが、地域密着度が高く知名度、信頼度があり、絆も強くなります。たとえばふくおかフィナンシャルグループやコンコルディア・フィナンシャルグループなど県をまたぎ広域展開しているグループもあります。

また地方銀行には仙台銀行や東京スター銀行など、相互銀行が前身となっている第二地方銀行も存在します。

ネットバンク

利用者にとっては利便性が抜群で、隆盛を極めています。パソコンやスマホで取引できるほか対面店舗を持たない、紙の通帳の発行はせず、キャッシュカードだけを付与するなどが特徴です。

じぶん銀行(三菱UFJフィナンシャル・グループ)、ジャパンネット銀行(三井住友フィナンシャルグループ)、楽天銀行などがあります。

信託銀行

法人融資を中心に遺言執行、遺産整理、証券代行、年金運用など幅広く業務を行っています。

 

銀行業界の市場規模

全国銀行協会発出の2018年(平成30年)版決済統計年報によると、手形交換高は261兆2755億円、他行為替取扱高は2880兆5970億円、CDオンライン提携取引状況(支払金額)は11兆4391億円となっています。

 

主要銀行と年収(有価証券報告書より抜粋)

メガバンク

三菱UFJフィナンシャル・グループ 10,675,000円
三井住友フィナンシャルグループ 11,551,000円
みずほフィナンシャルグループ 9,111,000円

その他大手銀行

りそなホールディングス 8,917,000円
三井住友トラスト・ホールディングス 13,037,000円

上記以外の銀行の平均年収については各行、上場していれば毎年発行されている有価証券報告書に必ず記載がありますので、そちらで確認をされてみてください。

 

銀行業界の動向

ここではざっくりとですが1996年から現在までの銀行業界の動向をお伝えしていきます。

1996年、日本をニューヨークやロンドンのような国際市場に戻そうと、いわゆる日本版金融ビッグバンによる一連の改革がスタートしました。

時を同じくして阪和銀行が戦後初の破綻。1997年には北海道拓殖銀行も大手初の破綻。銀行は倒産しないという神話がとうとう崩壊し始めます。

1998年には改革の一環として、外国為替取引が自由化。また金融持株会社も設立できるようになります。

2000年、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行が統合し、現在のみずほフィナンシャルグループの礎を築きます。

以後、大手銀行は再編、統合を繰り返しさらに巨大組織グループ化。現在の3メガバンク体制へと移行していきました。

 

銀行業界の展望(予測)

フィンテックが銀行を変えつつある

金融とITの組み合わせが世間に注目され始めたのはもちろん2010年代に入ってからです。インターネット決済、海外送金、資金調達が世界に広まり、2015年にはフィンテックという言葉も生まれその後、メガバンクも注力し始めます。

そして2020年現在、海外ではフィンテック勢力が銀行、証券、保険の縦割りをとっぱらい総合金融サービスに参入しています。その波を受け日本でも規制緩和の方向です。今後、

・住宅ローン、投資信託、保険など金融商品を一括販売
・金融サービス仲介業(仮称)の新設

を可能とする法案が閣議決定されています。

これでフィンテックに強いIT会社など異業種企業が、金融サービス仲介業にどんどん参入しやすくなると思われます。

この流れに銀行はどう対応していくのか、その動向に注目していきたいところです。

 

メガバンク各グループの比較

【三菱UFJフィナンシャル・グループ】

三菱UFJフィナンシャル・グループは、三菱UFJ銀行を中心とする国内最大の資産規模を誇る金融グループです。メガバンク3行のうち最終利益は、他に差をつけトップの座についています。

そんな三菱UFJは海外事業に注力しており2013年、タイ、アユタヤ銀行を買収。2019年、インドネシア、バンクダナモンを子会社化しています。また2020年2月、東南アジア配車最大手、グラブと金融分野で資本提携を結ぶと発表しました。

基本情報
連結経常収益:6兆6974億200万円
連結経常利益:1兆3480億4300万円
店舗数:支店等 国内750、海外72(2019年3月末現在、三菱UFJ銀行)
社員数:33524名(2019年3月末現在、三菱UFJ銀行)
平均年齢:42.1歳
平均勤続年数:16.8年
平均年収:10,675,000円
【三井住友フィナンシャルグループ】

三井住友フィナンシャルグループは、三井住友銀行を中心とする金融グループです。

三井住友は国内初、銀行系フィンテック企業を設立したことが2017年、話題となりました。

2019年3月期決算ではメガバンク3行のうち、連結業務純益でトップとなり、唯一、増益を果たしています。

基本情報
連結経常収益:5兆7353億1200万円
連結経常利益:1兆1353億円
店舗数:国内本支店444 海外支店 19(2019年9月30日現在、三井住友銀行)
社員数:28401名(2019年9月30日現在、三井住友銀行)
平均年齢:39歳4月
平均勤続年数:15年1月
平均年収:11,551,000円
【みずほフィナンシャルグループ】

みずほフィナンシャルグループは、みずほ銀行を中心とする金融グループで、ユーシーカード、オリエントコーポレーションもグループ企業です。

2014年には日本IBMと共同開発を行うなど人工知能(AI)の活用に積極的姿勢をみせていました。

基本情報
連結経常収益:3兆9256億4900万円
連結経常利益:6141億1800万円
店舗等数:国内ネットワーク464 海外ネットワーク87(2019年6月30日現在、みずほ銀行)
社員数:29991名(みずほ銀行)
平均年齢:41.1歳
平均勤続年数:16.9年
平均年収:9,111,000円
参考文献
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ第14期有価証券報告書
株式会社三井住友フィナンシャルグループ第17期有価証券報告書
株式会社みずほフィナンシャルグループ第17期有価証券報告書
日経業界地図2020年版 日本経済新聞出版社

 

元銀行員が語るメガバンク

今回、メガバンクの元総合職であった方にお話を聞けましたので、これよりご紹介していきます!

 

元銀行員が語るメガバンクの特徴

銀行は差別化が難しい「お金」を扱っていますからメガバンク3行、その業務内容に大差はありません。ですがあゆみ(歴史)、注力分野が異なるため社風、強みなどにそれぞれ特徴があります。

例えば三菱UFJなら、外国為替専門銀行であった東京銀行が前身のひとつであるため、邦銀中、最も海外展開に強いといわれています。三井住友営業力が強み。特に住友銀行の本社が大阪だったため関西の営業基盤は盤石です。みずほは「ONE Mizuho」を打ち出し、グループ連携による高度なサービス提供を強みとしています。

元銀行員が語るメガバンクへの転職のしやすさ

正直メガバンクは人材が豊富ですので、他業界からメガバンクへと転職してこられる方は少ないです(転職しにくい)。ただしシステム開発に詳しい方、税理士・会計士レベルの知識を持っている方には門戸を開けています。しかし本当に狭き門で、営業はゼロです。この傾向はきっと変わらないでしょう。

やはり入行のチャンスは、新卒採用時となります。学生の方は面接対策を万全に行い、

・なぜ御行で働きたいのか
・他行ではダメな理由は何か

を、面接官に明確に伝えましょう。

元銀行員が語るメガバンクでの出世・栄転

メガバンクにおける指示系統は、所属部署で異なりますが支店業務ですと

担当者→支店長代理→課長→次長→副支店長→支店長

という流れです。支店長代理は支店長の次に偉い役職と思いがちですが実は、課長の下。私が在籍していた銀行では、初めて就く役職が支店長代理です。一方、本部

担当者→調査役→課長→次長→部長→副頭取→頭取

という流れです。

上記はあくまでも一例と捉えていただければ。主任や係長を置く銀行もあるようです。

栄転についてですが、大企業を扱う部署や海外への異動がそうです。地方の小規模支店や花形以外の部署への異動は…です。一度、出世コースから外れると戻るのがなかなか難しいです。

また近年ドラマなどで「出向」はまるで島流しのようなイメージで、描かれすぎていると思っています。むしろ入社10年くらいまでの大手企業経理部門に2~3年、出向を命じられるのは実は、栄転で喜ばしいことなのです。

元銀行員が語るメガバンクでキャリアを積む方法

メガバンクでは転職をしながらキャリアアップしていくというより、ひとつの銀行で着実に、出世の階段を登るイメージを持たれてください。そのため

・銀行内試験で良い結果を残す
・資格取得に励む
・業務上、大きな失敗をしない

ようにします。

メガバンクでは入社後5年間くらい財務、税務などの知識を問う試験、業務に関するテストがほぼ毎年行われます。順位は自分だけではなく上司にも通知されます。不合格、追試を受けるようでは出世からは遠ざかります。

昇進に特定資格が必要な場合もあります。資格なしではいつまで経っても昇格できませんので、勉強に励むのです。資格取得を含む自己啓発活動は人事評価にも関わってきます。

そして取引企業や銀行へ大きな損失を与えてしまうような大きな失敗をしないよう日々、業務一つひとつに緊張感をもって臨むことが求められます。

 

ありがとうございました!

銀行員って日々、勉強しないといけないんですね!

次章では就職、転職のアドバイスをお伝えしていきます。

 

銀行業界への就職のアドバイス

実は前章の元銀行員の方から、就職へのアドバイスも聞けましたので、引き続きお伝えしていきます。

 

就職活動ではコーポレートサイト、公開されているIR資料などを読み込み、各銀行の取り組み、強み、弱みを徹底的に分析し準備しましょう。

面接で自分のカラーを出せるよう、また自分の言葉でしっかり伝えられるようにするには、やはりいろいろと経験を積んだほうが有利です。在学中にさまざまな活動に取り組むべきです。

なかには財務や、会計系の資格を取ったほうが有利と思われている方もいるかもしれませんが内定後に取る人が圧倒的に多いです。就活時までにムリして資格を取らなくてもいいのではと考えます。

ただし私は大学1年、2年次の方で比較的、時間に余裕がある場合は勉強しチャレンジしてもいいとは思います。

また池井戸潤氏の小説が原作となっているテレビドラマ「半沢直樹」「花咲舞が黙ってない」などを参考にすると、銀行業務のことはなんとなくつかめるのではと思います。

最後に公式サイトなどで組織図を公開している銀行もあるはずですから、どのような部署があるか確認すると、企業研究につながります。

 

銀行業界への転職のアドバイス

メガバンクへは転職しにくいという情報をいただきましたが転職エージェントの公式サイトなどで銀行や関連企業の求人を検索するとゼロではなく、何かしら出てきますので、果敢に挑戦いただきたいです。

銀行業界で、これまでの経験やスキルを棚卸し、どう活かせそうかを考え、準備しておきたいものです。

銀行は知的労働メインです。就職・転職ともに有能で優秀な方が多く入行を志望してくるといえます。そのなかで入行を果たすには日々の努力はもちろん、就職課やキャリアセンターの方、転職エージェントのキャリアアドバイザーからの情報を参考に、素直に指導・助言を受け入れることがマストと考えます。

また、

・ファイナンシャル・プランナー(FP)
・ビジネス会計検定試験

などに合格すれば履歴書に記載できますので、書類選考で有利となります。

今のうちから時間をかけ準備し、求人が出たら、万全の体制で挑みたいものです。

 

まとめ

銀行業界は、店舗だけではなく本部、海外でも活躍できそうですね。

そんな銀行業界で、内定を勝ち取っていただきたいです!

就職と転職、共通していえることは人生の目的と就こうとしている仕事の方向性が合致していることが重要です。それがミスマッチを防ぐカギで、長続きできるかその明暗を分けます。

人生の目的についてその意味を、これまで考えたことがない方は関連記事で説明していますのでぜひ、併せてお読みいただけますと幸いです。

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